平楽古鎮は紀元前150年頃に町として形成され、現在まで2000年以上の歴史を有しています。中国南西地方における重要な商業・交通の中心地として、古代シルクロードにおける重要な役割を果たしてきました。その独特な地理的条件により、平楽は商人や旅人にとって必須の通過地になり、水路と陸路が交わる拠点として、貨物の積み下ろし、取引、文化的交流が一体となった活気ある市街地が形成されました。現在も、古鎮域内には古代驛道の遺跡が残っています。川沿いに建てられた古い街並み及び「上宅下店」(上が住居、下が店舗)という伝統的な建築様式から、昔の水陸交通の商業的繁栄が物語られています。
こうした歴史的遺構の一部は現在も見られます。例えば、古鎮の入り口にある「楽善橋」は1862年に建てられた、全長120メートルである七つアーチのある石橋です。この橋は地域における重要な交通拠点であり、古鎮が水陸交通拠点としての輝いた歴史を物語る存在であり、現在も活用され続けていて、古鎮の象徴的な存在となっています。
現在、平楽古鎮は新たな挑戦に直面しています。人口流出や過度な観光開発により、古鎮本来の真実性が徐々に失われ、一部の街には本来の機能がなくなり、歴史的景観が次第に消失しています。それによって、文化的意味・価値を明確に伝えることが難しくなっています。また、地域文化の希薄化、商業的運営の不安定、住居環境の悪化など、古鎮の未来に関わる一連の問題が存在しています。
続いて、古鎮における伝統的な街路、建築、景観に焦点を当て、より深い分析を行っていきます。
歴史上の商業的要所として繁栄した平楽古鎮には、白沫江がその街路配置に大きな影響を与えました。鎮内の主な街路は白沫江に沿って分布しており、そこから外側に向かって小さな路地が広がり、街路構造は全体的には「魚の骨」のような形になっています。
今回の調査範囲は古鎮の核心保護地区に基づいて設定されており、主に以下8つの街によって構成されます。具体的には、江西街、大橋街、竹編街、台子街、禹王街、興楽街、長慶街、福慧街です。
以下は平楽古鎮の建築機能分析です。図をご覧ください。
古鎮を全体的に見れば、建物の機能状態は主に「住居」「宿泊」「商店」「飲食店」「空き家」「その他」「建物(調査なし)」といった7つの分類があります。
具体的には、「住居」は主に福恵街の西側、竹編街の北側(奥部)、大橋街の西側、江西街の東側に分布しています。
「宿泊」は主に福恵街と竹編街に集中していて、「商店」はすべてのエリアにありますが、中、長慶街、興楽街、禹王街、台子街と江西街の数が比較的多いです。
「飲食店」は主に大橋街に集中しており、「空き家」は主に長慶街、興楽街、禹王街に多く分布しています。そして大橋街の南側、台子街の東側、江西街にも点在しています。
「その他」に属する建物は数が少なく、大橋街以外の6つの街に点在しており、主に車庫や物置倉庫として機能しています。
最後には「調査なし」(どうしても状態・情報が明確にできなかった建物)という分類がありますが、具体的には福恵街、興楽街(多い)、台子街、大橋街の西側、江西街に点在しています。
2.2.1 特徴
高さ:一階・二階建て、軒先から地面まで5メートル~ぐらい
材料:壁は板あるいは竹編み、屋根は黒い瓦が用いられている
構造:穿斗式木造
屋根形式:切妻屋根
色:茶色
扉・窓:高い窗、組み立てる板
2.2.2 真実性が高い建物のケース
真実性の高い建物は一階建ても二階建てもあります。一階建て建物の機能は商店または飲食店で、単独の棟も連続した棟もあります。立面が取り外しできる板で構成されており、一般的に正面には扉・窓が設置されません。
二階建ての建物は主に商店または服屋で、常に連続した棟の形式で並んでいます。一階には移動できる扉板、二階には窓が設置されています。一部の建物の建築様式は「吊脚楼」です。
2.2.3 真実性が低い建物のケース
無論、真実性が比較的低い建物もあります。これらの建物は立面の扉・窓の設置および壁の材料が伝統手法とは異なっています。
街中には、完全に伝統的な風貌を失っているいくつかの建物も見られます。このような建物は、主な柱と梁にもともとの材料が残されている以外には、立面の大部分および内装は全部現代的手法でつくられています。
2.2.4 伝統から真似した新築
歴史風貌がよく保存されていますが、「川西(四川省西地域)」の伝統的様式を継承した新築が多いです。
まず、伝統的手法に類似したこれらの建物は建材と装飾に伝統手法を継承しています。しかし、現代的建築であるから、体積と寸法では伝統建築とは違います。
その他、域内には完全に伝統から離れた建物もあります。このような建物は伝統建築と色が同じである以外には、完全に新しい現代建築に見えます。
最後には、完全に古鎮外の他地域の建物の手法(例えば建築様式)を参照した、伝統を真似した新築もあります。または完全に間違った建材を使ったものもあります。
3.1 景観
平楽古鎮の建築で作られる空間は道によって大きく変わります。建物の高さや道の横幅、周りの自然の状況で人が感じる空間感覚が変わります。道が細くなり建物が高くなるほどもっときつい感じになります。平楽古鎮は広い範囲のアスペクトがあります。道路の幅と建物の高さの比率によって、通りに建てられる建物の種類と移動レベルも決まります。この道のアスペクトによって、調査ゾーン内の兴興街のように高い建物が立ち並ぶ狭い通りは、日光がほとんど入らず、冷たく魅力のない雰囲気を作り出します。一方、江西街と福恵街のように建物が低く日光が多い広い通りは、より魅力的な雰囲気を作り出します。
3.2 緑化
建物と道沿いにある硬い物以外の物も空間感覚に影響します。自然が街の中にあると、葉っぱのような“やわらかい“物が目線に入り、建物などの“固い”線を隠して魅力的な環境が作り出されます
たとえば、福恵街は道沿いに生えている木と屋根裏から生えている木のキャノピーが作る自然のトンネルによって、静かでゆったりとした時間の流れる空間ができます。この静かさは住宅と宿泊が多い道には完璧だと思います。街の空間だけではなく、街の空気温も明らかに涼しく感じます。他の道でも似たことが起こっています。
大橋街のさらににぎやかな飲食店と客数が多い道では、この木のキャノピーは福恵街と違う使い方がされています。この道の木は飲食店と商店にいる客用の日陰になり、訪れるたくさんのお客にとって魅力的な環境を作り出します。木のキャノピー以外に大橋街は通りの真ん中を流れる小さな川があり、歩行者通路を2つの平行な道に分けています。